ANORA アノーラ (2024年) 139分【ネタバレ・考察】バカ2人の若気の至りと、取り巻きによるドタバタ珍道中。コメディ要素がありつつリアリティのある展開で恋愛映画エレルギーでも楽しめた作品。


ネタバレなし感想

本作は映画館で鑑賞する気がありませんでした。 ヌードシーンやセックスシーンが多いと前情報を聞いていたので、不快になりそうという懸念があったためです。
しかし不快になるような映像は全くなく、とっても見やすい映画だったという印象です。

しかし、アメリカにおけるセックスワーカーの立ち位置や彼女たちが置かれている状況に関する知識がないため、そこまで感情移入することもなく、なぜ本作がアカデミー賞の作品賞にノミネートされたのかは腑に落ちないというのが第一印象です。

テンポは良く、サクサク進んでいきます。
コメディシーンもあるし、主人公もそこまで嫌なやつではないので非常に観やすい作品です。
主人公役のマイキー・マディソンの演技はもちろん素晴らしかったのですが、周りの役者の演技も非常にリアルで良かったです。
しかし、映像の美しさや音響の迫力などはなかったため、配信でも良かったかなと思いました。

基本情報

Anora
ANORA アノーラ
2024年 139分

ANORA アノーラ

製作国:アメリカ

キャッチコピー:おとぎ話?うんん、現実(リアル)

あらすじ

NYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける 。

※参照元:公式サイト


日本版 予告編

英語版 予告編

スタッフ

監督 : ショーン・ベイカー
脚本 : ショーン・ベイカー
製作 : ショーン・ベイカー/アレックス・ココ/サマンサ・クアン

キャスト

アノーラ(アニー)・ミケーヴァ:マイキー・マディソン
イヴァン(ヴァーニャ)・ザハロフ:マーク・エイデルシュテイン
イゴール:ユーリー・ボリソフ
トロス:カレン・カラグリアン
ガルニク:ヴァチェ・トヴマシアン
ニコライ・ザハロフ:アレクセイ・セレブリャコフ
ガリーナ・ザハロヴァ:ダリヤ・エカマソワ
ルル:ルナ・ソフィア・ミランダ
ダイアモンド:リンジー・ノーミントン
ジミー:ヴィンセント・ラドウィンスキー
トム:アントン・ビター
クリスタル:アイヴィ・ウォーク
アレックス:ヴラド・ママイ
ダーシャ:マリア・ティチンスカヤ

ポスター/パッケージ



⚠️ネタバレあり感想⚠️

プロフェッショナル・アニー

序盤は主人公のアニーの仕事ぶりが描かれます。
その仕事ぶりはプロフェッショナルそのものでかっこいいなと思いながら見ていました。
アニーの接客は非常に気持ちよく爽やかで見ていて気持ちよかったです。

無駄なヌードじゃない

この作品ではヌードやセックスシーンが数多く登場しますが、きちんと人物描写や展開に必要なシーンのように感じました。
他の作品のように、ヌードを単に消費しているという印象がなかったため、不快になることはありませんでした。

過度に性的じゃない

これも観やすかった点です。
過度に男を喜ばせようとするようなセックスシーンではないように感じました。
湿度を感じないので嫌な気分にならずに観ることができました。
爽やかだったように思います。

幼稚な金持ち

中身が空っぽ過ぎますね。
作中では21歳と言及されていましたが、もしセリフで言われなかったら12歳くらいかと思っていたかもしれません。

それくらい幼稚で中身がない人物です。
人の痛みを全く理解できなさそうだし、自分の行いがどのように他者に影響を与えるか、全くわかっていない様子でした。
しかし、悪意があるわけではなく、本当にただのバカという感じでした。

親から本当になんの教育も受けていないんだろうなと悲しい気持ちになりました。

人間関係を知らない2人

作中、アニーの過去は描かれませんが、恐らく、この子って恋愛経験がほとんどないですね?
友人はいたようですが、深い人間関係を作ったことがあるような子には見えませんでした。

体目的の男に騙されていたりした経験はありそう。笑
多少の恋愛経験はあるのでしょうが、他人と深い人間関係を築く方法がある子には見えませんでした。

まともに恋愛経験がある人ならあんな表面上の会話を間に受けたりしないと思いますし、もっとお互いの人間性について理解しようとする会話をするはずです。

イヴァンも生育環境からして、きちんと人に向き合ってもらった経験がないように思います。

2人とも学んでいないため、あんな空っぽでバカ丸出しの行動に至ったのかなと思いました。

お互いの人間性に関心が無さすぎる

アニーがイヴァンと結婚した理由はお金です。
イヴァンがアニーと結婚した理由はアメリカに滞在したかったからです。
グリーンカードマリッジとトロスが言っていましたね。

母国語が違う2人は深い会話ができませんが、それ以前にお互いの人間性に全く関心がありません。

好きな食べ物は?出身は?どのようにして育ったの?これからしたいことは?
普通ならこれくらいの会話があって、ある程度素性が知れてから結婚しますよねん。
序盤はハッピーなシーンとして描かれていますが、個人的には2人とも頭が悪過ぎて絶望的でした。

全裸後転

ガキ過ぎて笑いました。
恐らく、観客全員、こいつが中身のないガギであることに気がついているのですが、アニーだけまともに相手をしています。

一発でこいつ中身空っぽってわかるのにね。
このガキ、こっちが使う分(金もらう)にはいいけど、こいつに使われたら碌なことにならねーわって、思いました。

ノリで結婚、それがおとぎ話である

よくよく考えてみたら、おとぎ話ってそんなもんですね。

シンデレラも、白雪姫も、眠れる森の美女も、リトルマーメイドも
全部一目惚れで物語が始まります。

王子が一目惚れし、一目惚れされた姫もそれをなんも疑わずに受け入れ、ハッピーエンドになるという、現実に置き換えたら違和感しかない話です。

きっと現実でも一目惚れすることはあると思います。
しかし、一目惚れされた方も一瞬でそれを受け入れるってちょっと違和感ありますね。
まあ、相手が王子なら金目当てでアリ!ってなるかも知れませんが、お互いの人間性は全く構築されていませんね。

多分好きな食べ物のことも知らないのでしょう?
お見合い結婚の方がまだコミュニケーションしていますよね。

突然の爆笑シーン

イヴァンの取り巻きが家にきた時のアニーの暴れっぷりには笑いました。笑
しかも、あんな大男2人なら、暴力を使えば簡単に取り押さえられるはずなのに、暴力の選択肢を全く考えてもいないからこそのリアクションで面白かったです。笑

電話の暴言の言い合いに引いて少しずつ電話から距離を取ろうとするし。笑

イゴールはバックしているように見えるし。笑

ほどけと言ったらまた暴れて抱きしめる形で取り押さえている時のイゴールの顔が面白すぎる。笑

この一連のシーンはずっと爆笑しっぱなしでした。笑
その辺のコメディ映画よりもずっと面白かった。笑
名シーンだと思います。

恐らく愛情を注がれて育っている

多分なのですが、イゴールは愛情を注がれて育っていますよね。
おばあちゃんからもらった車に乗っているくらいですから、きっと愛も学んで育てられたのではと思いました。
だからこそ、自分のことは一旦置いといて、人の気持ちを考えられる人なのかなと思いました。

何も描かれてはいませんが、両親はいないけどおばあちゃんには愛されて育ったのかなという予想します。笑
きっと何かを乗り越えているからこそどんな人に対しても偏見がないのかなと思いました。

私はアニーのことを別に性格が悪いわけではないけどバカ女だなとしか思っていなかったのですが、イゴールはもっと俯瞰的に状況や彼女のことを見ていたように思います。

嫌なゴールドディガーではない

金目当ての女(ゴールドディガー)ではありますが、あんまり嫌味じゃないのはなんでなんですかね。
浮かれて、結婚したものの、イヴァンにわがままを言ったりしないし、結婚後も性的サービスをしっかり提供していました。

搾取することだけを考えているようには見えないので、どこかバカで可愛いです。
この映画の登場人物、一歩間違えたら本当に嫌な奴らなのに、悪意を持って描かれていないからか、不快感がありません。

2人ともそれぞれの言語能力が上達しているのも面白かったです。

ボロ雑巾かのように捨てられる

そりゃそうだよね。
関係性を全く構築できていなかったのだから。

イヴァンからしたらアノーラもゲームの中のモブキャラです。
なんの感情も執着も理解もありません。
それに気がついておらず、人として扱われようと頑張るアニーは物凄く間抜けで世間知らずでバカで不憫です。

返品する感覚

イヴァンからしたら親に怒られたから返品する感覚だったんでしょうね。

爆笑機内

『今言うことではないのですが、感謝しています』ってラリった取り巻きが突然言っていたのには笑いました。
そして、それを静止したにも関わらず、部下に負けてられないと思ったのかトロスまで感謝を述べ始めたのには爆笑しました。
最高のシーンですね。

笑う父親

この状況で問題を解決させようとする母親はまだまともだなと思いました。
一応、迷惑料という形で金もくれたし。

にも関わらず笑っている父親は殴りたくなりましたね。
アニーを人とは思っていないし、この出来事の処理も母親が全部やっています。
それでよく笑っていられるよな。
普段嫁の言いなりになっているストレスが少し発散されて楽しかったんですかね。
それか犬が喚いてるという感覚だったんですかね。

イヴァンにもまともに向き合っていないんだろうなというのが容易に想像ができます。

謝罪するべきでは?

あんたのバカ息子が1人の女性を振り回したんだぞ、謝るべきだって言ったイゴールは平等に人の気持ちを考えられるいい子ですね。

母親からしたら財産目当てで息子をたぶらかして結婚したんだろうと思っているんでしょうね。
この時は圧迫感を感じました。
金持っている方が優先され、事情を何も聞いてもらえないと言う経験があったのでその時のことを思い出しました。
今はまだSNSで晒すなどという攻撃手法ができたのでマシだなと思います。

仕事との線引きができていない

結婚した後も性的サービスを提供していたので、娼婦という仮面を被ったまんま、接していました。
にも関わらず、自分の人権を認めさせるためにイヴァンと話そうとしていたし、必死になっていました。

アニーも23歳だからね。
まだ仮面の切り替えというか、線引きみたいなものを理解できていない様子でしたね。

気がつきましたね

イゴールがアニーをずっと人として扱うので、ようやくアニーは人間関係はこういったコミュニケーションを重ねて築き上げていくものなんだと気がついたように見えました。
今まで自分が経験してきた人間関係やコミュニケーションの不健全さに気がつきましたね。
相手を身体的にも精神的にも気持ちよくしてすることで対価を得るというのは違うんだと。

イゴールは自分のメリットやデメリットは何も考えず、道理的におかしいと思ったからせめて婚約指輪を盗んでおいたのですね。
アニーとも他愛のない会話をしていました。

自分のバカさに泣いているように見えた

様々な解釈ができるあのラストは素晴らしかったですね。
私は自分のバカさに気がついたのもあるだろうし、あのクソ同僚のダイヤモンドが言った通りになってしまったし、この生活から抜け出せるかと思った自分が情けないのもあるだろうし、色々な気持ちが混ざった涙だと思いました。

心に傷を負って、プライドや尊厳を傷つけられて、あのクソみたいなお店に戻って、あの線路の真横の家に住む生活に戻るのか。
絶望ですね。ラスト、まだ共感能力が高く、道徳心のあるイゴールがいてくれてよかった。
あれアニーが1人で泣いていたら見ていられませんでした。

余談


参考サイト