PITY ある不幸な男 (2018年) 97分【ネタバレ・考察】満たされているはずなのに満たされない人間の愚かさ。自己中ナルシスティック中年男、悲劇のヒロインになりたい。


ネタバレなし感想

弁護士で豪邸に住み、息子は成績優。さらには美しい妻を持つ冴えない中年男性。 欲しいものは全て手に入れた上で満たされない何かを埋めるためにとんでもない行動をするという、まさに現代病とも言える作品でした。
普通に怖い。

セリフ少なめですが、わかりやすかったです。
あと映像が綺麗でした。

Pityの意味

てっきり主人公のあだ名なのかと思ったら違いました。
本作では名前が出てきません。

英語で”哀れみ、同情、残念な事、気の毒な事”という意味だそうです。
まさにこの男のことですね。
ナイス副題です。

https://ejje.weblio.jp/content/pity

基本情報

Pity
PITY ある不幸な男
2018年 97分

PITY ある不幸な男

製作国:ギリシャ/ポーランド

キャッチコピー:血も涙も枯れ果てた、そして、悲しみに囚われた不幸な男がたどり着く、世にも愚かな不条理劇。

あらすじ

ティーンエイジャーの一人息子と何不自由ない生活を送る弁護士の男性。しかし、彼の妻は不慮の事故により昏睡状態に陥っている。彼の境遇を知り、同情心から親切になる周囲の人々。そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れ…。

※参照元:U-NEXT


日本版 予告編

英語版 予告編

スタッフ

監督 : バビス・マクリディス
脚本 : バビス・マクリディス/エフティミス・フィリッポウ

キャスト

弁護士役:ヤニス・ドラコプロス
弁護士の妻役:エヴィ・サウリドゥ
被害者の娘役:ノタ・ツェルニャフスキ
ドライクリーニング店のオーナー役:マキス・パパディミトリウ

ポスター/パッケージ



⚠️ネタバレあり感想⚠️

みんながかまってくれる

主人公の妻は交通事故によって、昏睡状態となっており、主人公は周囲の人間から同情してもらっている。
上の階の住民は気の毒な主人公を思って毎日ケーキを焼いて渡しており、クリーニング屋の亭主は毎度優しい声をかけてくれる。
そして友人たちは彼を気に掛ける言葉を投げてくれる。

対して注目もされなくなった中年男性がみんなにかまってもらえる心地よさに目覚めてしまった気がします。

父親は見抜いている?

白髪が増えたという話をしても父親だけはまともに取り合っていませんでした。
こいつは悲しんでなんかいなくて、かまって欲しいだけというのを父親はわかっていたような気がしました。

息子の1番でもない主人公

『ママの料理が食べたい』

おい、息子!笑
デリカシーはどこに置いてきたんだ!笑
気持ちはわかるが父親のことを少しは思いやってやろうぜ!笑

主人公は高学歴高収入の弁護士ですよね。
恐らくですが、仕事が忙しくて家庭のことは妻に任せて仕事をしていたんでしょう?
見えないところで家族のために頑張っていた見返りが『ママの方が好き』というのはなかなか寂しい話ですね。

みんながかまってくれなくなる

しかしある日、妻が奇跡的に昏睡状態から目覚めてしまいました。
すると、今まで自分に同情し労ってくれていた人たちが普通の対応に戻ります。
そりゃあ奥様が奇跡的に回復しておめでとうとしかなりませんよね。

奥様の回復を祝って知人が集まってくれた際、主人公は端っこでどこか納得のいかないような背中をしていました。

あのシーン、明らかに注目を集めている妻に嫉妬していますよね。
今までは自分に向いていた注目が妻に集中し、いずれは妻が事故に遭う前の生活に戻るわけです。

共感できていないという繋がりの希薄さ

序盤で字幕に映し出されていましたね。
『人は共感できないときにかける言葉がなく、”なんと言ったらいいか、、、”などと言う』
みたいな。

主人公が受けていた同情も結局、中身は空っぽなんですよね。

主人公の願望

何よりも自分が優先されたい、誰かから熱烈に求められ、世間には賞賛されたいということなんでしょう。
シック・オブ・マイセルフの主人公と一緒です。笑
願望が中学生。笑

きっと今までは羨望の眼差しを受けることもあったのでしょうが、中年になって注目されることも無くなったんでしょうか。
今まで頑張って勉強して弁護士にもなって、ギリシャ危機も乗り越えて(?)、妻が昏睡状態の間はできる限り息子の面倒をみているのに、なんで誰も僕を賞賛してくれないんだ!?って気持ちが爆発してしまったのでしょうか。

なんか身近な人をもっと意識的に褒めてあげようと思いました。笑

担当している事件

依頼人の父親が30箇所も刺されて殺され、現場には黄色い自転車が残されており、爆音で音楽が流れていたそう。
そして依頼人の夫は事件のショックで一晩で白髪になってしまったと。

ヒステリックでドラマティック

ロジックが求められる弁護士のはずなのに、弁護の内容がまるでシェークスピアかのようではなかったですか?笑
言っている自分に酔っている感じ。笑
証拠がどうのとかではなくずっと感情に訴える感じ。笑

この人は今まで感情を抑えることに必死で、感情的になることを知らなかったが、突然妻が昏睡状態に陥ったとき、我慢できずにないたということなのでしょうか。
自身の感情の爆発が気持ちよかったのでしょうか。

泣くことによってストレスが発散されるという気持ちはわかりますが、映画などを観て泣くという偽物の涙では快感を得られなかったのでしょうか?

登場人物に名前がない

それくらい俺たちってモブだよねっていう意図を感じました。
自分のことを特別だと思いたいもんですが、残念ながらモブです。

きっとほとんどの人が大人になるにつれて、いろんな人の才能を見せつけられ、心が折れてモブとして人生をそこそこ楽しむことに着地するのではないでしょうか?
この主人公は一応良い生活を送っているようでしたので、同じモブでもひとつ位が高いポジだから、割り切れなかったのかしらと思いました。

完全自殺マニュアルの一節を思い出しました。

”我々はレンガの壁の中の一つのレンガに過ぎない。一つ無くなったところで壁は崩壊しないし、別のレンガが差し込まれるだけだ。”

的なことが書かれていたような気が。
悲しいけど、それが現実ですよね。

『みんな特別ということは、誰も特別じゃないってことだ』

ってMr.インクレディブルのダッシュも言っていましたね。

まあそういうことですよね。

やっぱり親に問題あり?

父親に感情を吐露するシーンがありますが、なんか父親冷たくないですか?
主人公があまりにも同じ話ばかりするので聞き飽きてるんですかね?

事実、実績ベースで物事を評価し、気持ちには寄り添わない、一歩間違えたらモラハラ系の父親なのでしょうか。
母親が亡くなっているということでしたので、母親からの温かい抱擁や言葉があったらまた結果は変わっていたのでしょうか?

中年男性が父親に”僕、心が疲弊して白髪が増えたんだ!”って言ったら”増えてないぞ”と一瞬で一蹴される様は悲喜劇でしたね。
犬の真似をする主人公には笑いました。

これ子供が親に甘えているだけのシーンですよね。
親も中年の息子が甘えてくるとは思っていないから淡々としているのですかね。笑

悲しいほどに無機質

会話に驚くほど感情が乗っていないです。
全部AIなんじゃないかと思うほどに温もりを感じません。
表情もほとんど動かない。

現代社会ってこんなに冷たかったでしたっけ。
こんなに冷たくて無機質な世界でしたっけ。

彼にはこう見えているんでしょうか。
だからこそあからさまな言葉やケーキでしか人の温もりを感じれないのでしょうか。

真逆かと思っていた

最初、ケーキを受け取る際に2回チャイムを鳴らされるまでドアを開けていませんでした。
てっきり、人との接触が億劫になっている人なのかと思ったら、あのシーンは落ち込んでいるという演出だったのですね!笑

”これからかまってもらえる!同情のアレがくる!”

っていうウキウキの顔だったのですね!笑

クリーニングも、かまって欲しくて必要のないクリーニングを出していたのですね。笑

願望が吐露されていた

映画の話をしていましたね。
主人公はボクサーで8、9歳の息子がいて、妻とは離婚している。
リングに上がり、試合の結果、死亡。
同じときに離婚した妻が息子を取り戻そうと試合会場に来るが、母親のことは無視して息子が駆け寄ってくるという話。

とにかく悲劇のヒロインになりたくて仕方がないということなんですね。笑

歌の意味

わかりませんでした。笑
なにあの歌の歌詞。笑

ピアノを練習している息子に対して、
『明るい音楽を奏でるなんで不謹慎だ』
と息子に言った後に、
『ママの死に備えて歌を作った。聴くか?』
って、笑わせんな。笑
お前が誰よりも不謹慎じゃねーか。笑
死ぬスタンバイしてシミュレーションもしているじゃねーか。笑

ウキウキしていますよね?
これで妻が死んだらもっと周囲に同情してもらえるって。笑

妻の意識が戻ったシーンは、絶望的な曲が流れ、まるで最悪のことが起こったかのような映像になっていました。笑

狂ったピアノの旋律

自分で息子が弾くピアノを壊していましたね。
これから主人公が行うことが予見されているシーンでした。
もう狂ってしまったのである。

同情では泣けない

主人公、病院の待合室で泣いている母親と病気の息子の姿を見ていました。
翌日、1人で無になっている母親を見ていました。

自分が担当している事件の依頼人の自宅に行き、殺された父親の写真や部屋に入って共感しようと頑張っているように見えました。
そして依頼人が父親を失って泣いている姿を見つめていました。

羨ましがっていましたね?
俺もあんな風に泣きたいって思っていましたね?
でも他人の同情では泣けないのですね?
なんだこの変な主人公。笑

珍しく感情的な主人公

上の階にケーキを求めに行くとき怖かったです。

まずは動物から

多分やるだろうなとは思いました。
取り残された犬が可哀想すぎる。

てっきりあのまま溺れて死んでしまったのかなと思ったら、ラストで泳いで岸までたどり着いたのには爆笑しました。
コイツやるじゃん!笑
最高の犬だよお前!笑

なにこれ

病院の知らない少年に『妻が昏睡状態で乳がん』だと嘘をついて、知らない昏睡状態の髭の生えたおじさん患者にキスをしていました。

看病することも快感だったんですか?
なにこれ?それどういう感情?笑

やっぱりそうなったか

周囲に嘘がバレて、同情を摂取できなくなった主人公はとうとうやってしまいます。

まさか妻を殺したりしないよね?と思ったら妻どころじゃなかったですね。
父親も殺してしまいました。
息子は殺されたのか明確には描かれていませんでしたが、恐らくは殺したのだと思います。
これはやってしまいました。
このシーンを見た時の感情を言葉にできません。
なんというか、やってしまったのかという感情。

彼の計画

担当している事件の被害者を弁護しているから、犯人に恨まれて家族が殺されたというシナリオですか?

飾っている絵を変えるときのナレーションでは、自分の甥が犯人と疑われて、裁判を受けていて、自分がそれを弁護するという妄想をしていました。
自分の甥っ子を犯人に仕立て上げて、その甥っ子を弁護したいということ?

描いているシナリオが泥沼裁判すぎるって。

”あんなことがあったのに、甥っ子を庇って許してあげる聖人”として見られたいということでしょ?
やばすぎるって。

あと毎回自転車を現場に置いていかないと思う。
”俺がやったんだぜ”という自己顕示欲が強い系サイコパス殺人鬼という設定なの?
白髪に染めていましたね。
もう本当にこの男やばすぎる。

本物の涙を流したい

妻と息子は愛していたのだと思いますが、その愛より、自分の心が満たされる方を選んだのでしょう。
心から悲しんで泣きたいし、そんな絶望的な状況にいる自分自身に同情してもらいたい。

おじさん版の悲劇のヒロイン症候群ですね。
痛いしコメディだし、取り返しのつかないところまで行ってしまったし、見ていてヒリヒリします。

アテンションはドラッグ

依存性があるみたいです。
怖い。しかも特定の人にかまって欲しいというのではなく、そこまで親しくない他人からの注目を集めたいというのは中々厳しい話ですね。
私はそんな経験がないのですが、もしかして自分もそれを感じる時が来るんでしょうか?
この主人公の気持ちが理解できる時がいつか訪れるのでしょうか?
自傷行為や他人への迷惑行為をしてまで誰かにかまってもらおうとする時が来るのでしょうか、、、。


参考サイト